秋山瑞人『イリヤの空、UFOの夏』~「六月二十四日は、全世界的に、UFOの日だ」~

「おっくれてるぅ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――っ!!」

 

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出版年:2001-2003年

出版社:電撃文庫

著者:秋山瑞人

イラスト:駒都えーじ

巻数:全4巻

 

ライトノベルの傑作と聞かれて、皆さんはどんなタイトルを思い浮かべるでしょうか?

私は『イリヤの空、UFOの夏』です。

 

目次

その1

 第三種接近遭遇/ラブレター/正しい原チャリの盗み方-前編-/番外編・そんなことだから

その2

 正しい原チャリの盗み方-後編-/十八時四十七分三十二秒-前編-/十八時四十七分三十二秒-後編-/番外編・死体を洗え

その3

 無銭飲食列伝/水前寺応答せよ-前編-/水前寺応答せよ-後編-/番外編・ESPの冬

その4

 夏休みふたたび-前編-/夏休みふたたび-後編-/最後の道/南の島/エピローグ

 

 

熱狂的な信者を持つライトノベル・SF界をまたにかける男、秋山瑞人の名を天下に知らしめたこの作品『イリヤの空、UFOの夏』は、今なお6月24日になると聞こえる、不思議な叫び声の音頭を執り続けている。

彼らはこの日になると窓を開けて、

それからこう叫ぶ。

「おっくれてるぅ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――っ!!」

からり、とっ。

第1巻の記念すべき場面を真似して。

 

あらすじ

「6月24日は全世界的にUFOの日」新聞部部長・水前寺邦博の発言から浅羽直之の「UFOの夏」は始まった。当然のように夏休みはUFOが出るという裏山での張り込みに消費され、その最後の夜、浅羽はせめてもの想い出に学校のプールに忍び込んだ。驚いたことにプールには先客がいて、手首に金属の球体を埋め込んだその少女は「伊里野可奈」と名乗った…。おかしくて切なくて、どこか懐かしい…。ちょっと“変”な現代を舞台に、鬼才・秋山瑞人が描くボーイ・ミーツ・ガールストーリー、登場。

(出典:「BOOK」データベースより)

 

主な登場人物

浅羽直之 ― 主人公。園原中学校2年生。

伊里野加奈 ― 8月31日夜中に学校のプールで出会った少女。転校生。謎が多い。

須藤晶穂 ― 浅羽のクラスメイト兼同じ新聞部員。気が強い。

水前寺邦博 ― 3年生。園原電波新聞部部長。季節ごとに興味の対象が変わる男。

榎本 ― 謎の男。自称・伊里野のお兄さん。アジア一危険な男。

椎名真由美 ― 美人保健医。伊里野とも関係あり。

 

感想

秋山瑞人は天才だと思う。

理由①

ちゃんと完結させたのがこの作品と『猫の地球儀』と『鉄コミュニケイション』くらいしかない

理由②

 『E.G.コンバット』も『ミナミノミナミノ』も『DRAGONBUSTER』も続きが出なくてもめげないファンがいる。あと『空』と『海』はでたけど、『陸』が出ない

理由③

この10年で2冊も出している。すごい。EGFマダー?

 

と、おふざけはこのくらいにして。

イリヤの空、UFOの夏』は、「最高のライトノベルといえば?」という投票があったら、1位として上げられることの多い作品です。

先ほどから言っている秋山瑞人なる人物こそ、この作品の著者。そして、そのファンは「瑞っ子」と(自ら?)呼ばれています。私も「瑞っ子」です。

その遅筆さに放置を食らい、忘れかけたころに次の巻が出て、また次の餌を食卓の椅子に座って待ち続けるという、いわば修行ともいえる時代を再び過ごしています。

おっと、本題。

ライトノベルというと「ちょっとなー」と思う人も多いことでしょう。レジでは表紙を見せずに、裏側にして店員に渡す人もいるそうですね。

しかし、この作品はそれでもいいから読んでほしい作品です。

若い子からおっさんまで楽しめるはず。なぜなら、「誰しもが知っている」「大人になっても忘れることのできない」「思春期特有の高潔な精神と惰弱な現実」といった要素がふんだんに盛り込まれているからです。

ライトノベルは、いわば若い子のポルノだ。そんなイメージを持たれている方にも読んでみてほしいですね。そんなことをいっている人ほど、自分の学生時代のような胸きゅんにやられて、しまいには読み終わって魂が抜けたまま仕事に行く羽目になることでしょう。

文体は好き嫌いが別れるかもしれません。私は大好きですが、地の文よりもたくさんのシーンを楽しみたいという人には向かないかもしれません。逆に、ちょっとした諧謔や上手に誘導する文章が読みたい人にはおススメの作品です。

何度も読み直すたびに何度も発見があって、毎年読んでも苦痛に感じることはありません。年を取って読み直してみると、感情移入するところが変わっていたり、登場人物についてのとらえ方が変わったりして、それも楽しみの一つといえるでしょう。

 

自分が思うこの作品の素晴らしいところは、たくさんありすぎて語りつくせませんが、ここでは冒頭の書き出しを上げておきたいと思います。

 

めちゃくちゃ気持ちいいぞ、と誰かが言っていた。
だから、自分もやろうと決めた。
山ごもりからの帰り道、学校のプールに忍び込んで泳いでやろうと浅羽直之は思った。

――『イリヤの空、UFOの夏その1』

この3つの文章だけで、始まりがどんな場面、どんな場所なのかがはっきりとわかります。

場所は学校のプールですね。そして、「忍び込む」ということは、少なくとも昼ではなく、夜か早朝。ですが、「山ごもりからの帰り道」というところから、夜だろうと簡単に理解できます。

ぶっちゃけてしまえば、最初の一文だけでも出だしとしては十分な情報量ではあるんです。凡庸な作者であれば、それで終わらせてさっさと本文のシーン描写に移ることでしょう。

しかし、素晴らしいのは二文と三文。これがあることで、読者に感情移入と場面理解を挿せるようになっています。解説してみると、

 

最初の文は「伝聞」→何の?→「気持ちいいという状態」→「何が気持ちいい?」

次の文は「上記の理由から」→「決断」→「主人公の性格付け」→「で、何をするの?」

そして最後の文で「具体案」→「学校のプールに忍び込んで泳いでやろう」→「主人公の名前」

 

これだけで一気にその世界が見えてくるのです。そして、ここまで短い文で魅せられる作家もそう多くはないでしょう。

秋山瑞人は他の作品にも素晴らしい出だしと、シメが多いのが特徴的で、私なんかは『猫の地球儀』の最初の数ページだけで泣いたこともあるほどです。

 

ああ話がまとまらない。

 

とりあえず、まだ手に取ったことのない方は是非読んでみてほしい作品です。

あ、あと忘れてました。この作品は笹本祐一さんの『妖精作戦』の影響を受けています。『妖精作戦』は秋山先生以外にも、『涼宮ハルヒの憂鬱』で有名な谷川流、『第六大陸』の小川一水、『図書館戦争』の有川浩、といった面々にも影響を与えており、こちらも読んでみるとその影響を見て取れると思います。

特に『イリヤ』はかなりオマージュしているので、『イリヤ』を読んだ後に『妖精作戦』を読むととても面白いですよ。

あと、季節は夏とはいっても、9月から10月にかけてがメインです。プールは8月31日ですが、物語の期間的には2か月ほどです。これだけの期間の話なのに、この話から抽出できるモノはすさまじいものがあります。どれだけ構想を練ればこんな話をかけるのだろう。驚きです。

ネタバレはもう一つ投稿するそっちの記事で書く予定なので、こちらはあっさりとしたところで終わらせたいと思います。

最後までありがとうございました。

 

 

『フィリッピーナを愛した男たち』(1992年)ドラマ(映画)

 かなり間が開いてしまいましたが、元気でやってます。

 

 さて、今回はドラマ。

 ドラマといっても連続ドラマではなく、テレビ映画のような一話完結の作品です。

 Youtubeの「チャンネル桜」様にて、視聴することが出来ます。

 

 

『フィリッピーナを愛した男たち』

 

放送日:1992年12月11日

制作:フジテレビ

監督:水島聡

主演:玉置浩二ルビー・モレノ

 

あらすじ

 ふとん屋の営業マン敏夫(玉置浩二)は、借金が嵩んで妻に逃げられてしまう。その寂しさを紛らわすために立ち寄ったフィリピンパブで、マニラ出身のルビー(ルビー・モレノ)と出会う。福島に母(中村玉緒)を残して上京した敏夫と、フィリピンに家族を残して出稼ぎに出てきたルビーは、寂しさを共有しながら 互いに惹かれ合っていくが...

(引用:https://www.youtube.com/watch?v=AMBQgLotsso

 

感想

 放送されたのが1992年ということで、バブルの余韻が残りつつも、その酔いも冷めてきた頃合いです。

 私は当時生まれたばかりなので詳しい状況については知りえていませんが、当時は「ジャパユキさん」なんて言葉があったように、日本に出稼ぎにきたアジアの人たちと結婚した人もいたそうですね。

 それとは別に、外国で売春をしているサラリーマンもそれなりにいたと聞きます。

 今はどこの国でも厳しい取り締まりが行われているそうなので、あまりそういう話も聞かなくなりましたね。

 

 さて、この作品についてですが、私が興味を持ったきっかけをまず簡単に。

 私は玉置浩二の大ファンです。歌はもちろん、その演技にも朴訥なところが出ていて、とても好きです。ただ、この時期の玉置浩二といえば、安全地帯の活動停止、セールスがかなり落ち込みを見せ、健康問題では病気を患ることもあったようで、かなり消耗していたようです。

 その玉置さんはこの時期から「俳優」としての露出がかなり増えていきます。そして、そのどれもが印象的な演技でした。例えば1994年の『最後の弾丸』と『夢の帰る場所』なんかは本当に何度見ても圧倒されます。

 『夢の帰る場所』は『フィリッピーナを愛した男たち』の監督、水島聡さんが脚本を務められており、この作品も素晴らしいですがまたそれは後で。先に『夢の帰る場所』を視聴していたこともあり、同じ人が制作しているのなら、と『フィリッピーナを愛した男たち』にも興味を持ったというわけです。

 

 やっと本題。

 とても面白く、時にはほろりと観させていただきました。

 主人公の日本人である敏夫と、ヒロインであるルビー、そして敏夫の母親がとても印象的です。玉置浩二がああいう役を演じると、本当に素晴らしい。

 とても好きな場面は、ルビーが風鈴を持ってきた場面です。主人公の敏夫に感情移入している視聴者は「何故のこのこと来られるんだ!」と憤る場面です。しかし、この風鈴を持ってくるということは、少なくともルビーは日本の夏をしっかり知っている。文化を受け入れて認めていることがわかります。

 逆にどうでしょう。当時の日本からしてみれば、フィリピンは自分たちよりも遅れた国。その国の文化をしっかりと受け入れられた人は当時どれだけいたでしょう。最終的には、敏夫はフィリピンに骨を埋める覚悟で結婚します。それによって、フィリピンという国を受け入れたとみることが出来るでしょうね。

 他にも、今作品内ではかなりわかりやすく対比がなされています。男と女、日本とフィリピン、家族に対する扱い等々。

 フィリピン人について。「嘘つきで、怠け者だ」という人がいる。家族のためには、自らをビジネスに使ってでも助けようとする。ある意味一生懸命といえますね。堕胎することは禁止されている。カトリックが多いですからね。フィリピンは徹底して貧乏のように描かれています。それでも、みんなで分け合って仲良くしている。結婚も親の了承が必要。ただ、敏夫を売って店を手に入れたような輩もいます。

 日本人について。「浮気で、騙される」という人がいる。母親の財産を結局のところ、食いつぶしている。敏夫は結果的に母親の資産を借金返済や結婚式の費用で使ってしまっていますね。お金で問題を解決しようとしている。空港で、「足りなければまた払うから」と去っていくサラリーマンがいました。日本人同士で喧嘩のシーンもありましたね。玉置浩二がぶん殴られて、ルビーは男とタクシーに乗っていく。結婚は親に言うこともなく決めるし、離婚も事後報告。騙されて店を失うなんていう人もいます。

 それでも、敏夫が憎めないのは彼自身が騙され、嫌な目にあっても、ルビーのことだけを追い求めたからなのでしょう。

 二人の考えかたの違いも面白い。

 ルビーは最初、敏夫に「LOVEとちがうよ」といいます。ビジネスでそういうことをしている彼女ですが、嘘をついているわけではない。結婚しているわけでもないし、自分は自分で、自分のことを決める権利は自分にある。だから、一方的に俺の女になれというような考えは受け入れられない。

 敏夫は金を払っているのだから、と迫りました。でも、ビジネスのつもりではないのでしょうね。結婚していたわけではないけど、そういう関係になったし、恋人だと思っているから、他の男とビジネスでも付き合ったりしているのは許せない。でも、ルビーに底から惚れているので、わざわざ追っかけて行って最終的にはすべてを受け入れる。

 そして、なんといっても、中村玉緒の演じる母親がいいですね。敏夫のことをずっと心配していて、それでも幸せを祈っている。この点では家族を思うルビーと共通で、女性を端的に描いているのでしょう。

 対して、男性はかなり自分勝手な人ばかりでしたね。大谷直子が演じる女性も「昔の男がきたから日本に行く。失敗したらまた返ってくるかも」なんてことを言っています。もっと早く来てやんなよ……。

 

 ラストシーン。たくさんの子供たちとルビーと一緒にいる敏夫。これは『夢の帰る場所』とは対照的です。

 『夢の帰る場所』はネタバレになってしまうのでここでは特に言及しませんが、興味を持たれた方は視聴することをおススメしておきます。素晴らしい作品です。本田美奈子さんのご冥福をお祈りいたします。

 

 『フィリッピーナを愛した男たち』は原作があるようです。 久田 恵によるルポとして文春文庫から出版しています。こちらも後で読んでみたいと思います。

 

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 最後までご覧くださってありがとうございました。

 更新は不定期になりそうですが、良かったらお付き合いください。

 

 

 

 

 

xiaomi MI6が正式発表!4月28日発売!

getnews.jp

 

本日、Snapdragon 835を搭載した、Xiaomiの「MI6」が正式発表されました。

日本だとあまり知られていないXiaomiですが、世界的には結構売れています。以前ほどの勢いはありませんが、安価で高性能の製品を出し続けている点は日本企業も見習う必要がありそうです。

 

すでにインターネット販売サイト「GearBest」では「MI6」の在庫の予約分がはけてしまったようです。↓

www.gearbest.com

 

欲しい人は早めにチェックしておいたほうがいいみたいです。

 

発売日:4月28日

 

価格:64GB ― 2499元

   128GB ― 2899元

   Mi 6 Ceramic Edition(セラミックモデル) ― 2999元

 

 

 

スピッツ ハヤブサ その② 全体感想 

lonleylonely.hatenadiary.jp

 

その①の続きです。かなり妄想と考えすぎな要素が塗してあるので、興味ない方はブラウザバック推奨。長いです。

 

全体感想

これはコンセプトアルバムなのでは? と思ってしまうのは自分だけかしら。何を根拠にそんなことを言うのかというと、ほぼすべての曲で歌詞の中に「生(性)と死」が見え隠れしており、煌びやかにその対比が浮かんでいるためです。

まずアルバムの季節は夏ですね。そして季節は移ろい、「ハートが帰らない」では春、最後の「アカネ」では夏から秋になっていると思います。茜色、茜空といえばやはり秋空のこととなるでしょう。

最初の曲「1.今」では以下のような歌詞があります。

いつかは 傷も夢も忘れて

だけど息をしてる それを感じてるよ今

出典:スピッツハヤブサ』より

「今」とくれば、「いつか」も存在しています。その「いつか」は、「傷も夢も忘れ」るという、やや引っかかる歌詞です。そして「今」というと、「息をしてる」んですね。息をしていることを感じるのであれば、背後には「死」があるということがわかります。

では「いつか」忘れられる傷や夢とは、何時負った傷や夢だったのでしょう。それは、はっきりとは分かりませんが、先ほど引用した「息をしてる」のをわざわざ感じている以上、「死」が関わっているのだと考えられます。

それを感じさせる歌詞または印象があるのは「2.放浪~」「3.いろは」「4.さらば~」「5.甘い手」「6.Holiday」「8.宇宙虫」「9.ハートが帰らない」「10.ホタル」「11.メモリーズ・カスタム」「12.俺の赤い星」「13.ジュテーム」「14.アカネ」です。ほとんどすべて。

そう思う箇所を引用してみます。

2.放浪~ ― "オチは涙のにわか雨”

3.いろは ― ”波打ち際に 書いた言葉は 永遠に輝くまがい物”

4.さらば~ ― ”半端な言葉でも 暗いまなざしでも なんだって俺にくれ! 悲しみを塗りつぶそう” ”会えそうで会えなくて 泣いたりした後で 声が届いちゃったりして”

5.甘い手 ― ”遠くから君を見ていた いつもより明るい夜だった”

6.Holiday ― ”もしも君に会わなければ もう少しまともだったのに” ”君を探そう このまま夕暮れまで” ”心の扉を 痛みこらえ開けたよ”

8.宇宙虫 ― 歌詞がない。

9.ハートが~ ― 全部が全部当てはまるので省略。

10.ホタル ― ”時を止めて 君の笑顔が 胸の砂地に 浸み込んでいくよ” ”正しいものはこれじゃなくても 忘れたくない 鮮やかで短い幻” ”生まれて死ぬまでのノルマから 紙のような翼ではばたき どこか遠いところまで” ”それは幻”

11.メモリーズ~ ― ”あなたのために蝶になって 飛んでゆけたなら” ”嵐が過ぎて 知ってしまった 追いかけたものの正体”

12.俺の赤い星 ― ”一度だけ現れる 誰にでも時が来れば あくびするフリをして空を見た” 

13.ジュテーム? ― ”君がいるのはイケナいことだ 悩みつかれた今日もまた”

14.アカネ ― ”ゴミに見えても 捨てられずに あふれる涙を ふきながら” ”身体のどこかで 彼女を想う また会おうと言った 道の上”

出典:スピッツハヤブサ』より

 

 ……無理がありますかね(^-^;

まあ続き。

 少し本題からずれますが、「Holiday」と「ジュテーム?」の歌詞はネット上で、以下のように考えられているのをよく目にします。

Holiday ― ストーカーソング。

ジュテーム? ― 不倫の歌。

たしかに、そう考えるのが自然だと思います。が、私はへそ曲がりですので同じようには思いたくありませんでした。そこでいろいろ考えた結果が、上にある「生(性)と死」を、曲単位ではなく、アルバム単位での煌びやかさとしてとらえることでした。

つまり、コンセプトアルバムと考えることによって、一つ一つの曲の歌詞がすべて一つの世界や出来事を表しているのだ、というものです。

 

私の中にある大体のあらすじは以下の通りです。

・男は女に片思いをしていた。おそらく幼馴染。その後、二人は恋仲になる。

・夏にいろいろな思い出を作った二人。海にも行った。そこで来年もまた来るという約束をする。しかし、突然の別れがやってきた。

・彼女の死。

・落ち込む男。思い出を何度も辿り、ずっと忘れられない永遠の存在者を追いかけ続けて、迷い続ける。

・そこに、彼女が……。

・幽霊となって現れたのだった。

 

トーカーという見方も可能ですが、こっちのほうがロマンチックじゃないかな? ということで、「幽霊説」です。

そして、その際に考慮するのが、アルバムの曲順が時系列順なわけではないということです。区分けしてみると以下のとおり。

 

生前 ― 3.いろは、4.さらばユニヴァース、7.8823

死の瞬間 ― 5.甘い手、8.宇宙虫

死後 ― 2.放浪カモメはどこまでも、6.Holiday、9.ハートが帰らない、10.俺の赤い星

幽霊 ― 11.ホタル、12.メモリーズ・カスタム、13.ジュテーム?

その後 ― 1.今、14.アカネ

 

こんな感じだと考えました。細かいストーリーとしては、以下のような感じ。

 

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スピッツ ハヤブサ その① 紹介・評価

Amazon.co.jp: スピッツ, 草野正宗, 石田小吉 : ハヤブサ - ミュージック

 

発売年月日:2000年7月26日

週間最高順位:3位

売上:36.8万枚

2000年度のアルバム売上枚数:年間56位

 

※注意

独断と偏見による歌詞考察をしています。「おめえの妄想なんか見たかねえ」って人は その②全体感想 を飛ばしましょう。

 

本人たちの意向を無視したベストアルバム『RECYCLE』が発売された後、最初に発表されたアルバムです。9枚目のオリジナルアルバムは、それまでのスピッツとこれからのスピッツを大きく印象付けました。

 

曲目(青字はシングル曲)

  1. 放浪カモメはどこまでも album mix
  2. いろは
  3. さらばユニヴァース
  4. 甘い手
  5. Holiday
  6. 8823
  7. 宇宙虫
  8. ハートが帰らない
  9. ホタル
  10. モリーズ・カスタム
  11. 俺の赤い星
  12. ジュテーム?
  13. アカネ

 

作品紹介

収録シングルは 2.放浪カモメはどこまでも、10.ホタル、11.メモリーズ の三曲。ただし、2.放浪カモメはどこまでも、11.メモリーはアルバムverとなっています。

前年に『RECYCLE』が発売され、売上を伸ばしていた時に発売された『ハヤブサ』は、大きく変化したスピッツ像を描いていました。

話は遡り1998年、前作『フェイクファー』でメンバーは大いに苦しんでいました。一つ目はリスナーとメンバーの乖離です。スピッツについて、世間のイメージは「ポップな、優しい、棘のない」といったものです。しかし、本人たちはもともとロックやパンク志向で、そのイメージとの乖離に苦しんでいたそうです。(以前紹介したWANDS上杉昇WANDS時代を「アイドル」時代と例えていた、というのと被りますね)

もう一つはスランプに陥ったということです。ギターの三輪テツヤは急に引けなくなったこともあるそうな。ただし、この時の苦労は後に、ライブバンドとしてのスピッツを築いていくのに必要なものだったと今は思えます。その後、『RECYCLE』の発売。これは割愛しますが、大きく影響を与えたことは間違いないでしょう。

 

そして、『ハヤブサ』です。シングル『メモリーズ/放浪~』でリスナーは「?」となった後、『ホタル』で切ないスピッツを再確認。さて、どう来るか。そこでスピッツが示した姿は「ロックバンド・スピッツ」でした。

 

曲の感想

特に記載のない場合、作詞・作曲:草野正宗、編曲:スピッツ&石田小吉

 

 

 1.今

名刺代わりの一曲。いきなりロックな曲がこのアルバムの開幕を告げます。おや?なんか変だぞ? となったリスナーは、すぐこのアルバムに意識を持っていかれたことでしょう。私もその一人でした。


 2.放浪カモメはどこまでも album mix

またもやロック。実はドラムがすげえとなる曲。それでもしっかりとメロディを聞かせるところはスピッツらしい。このあたりで、アルバムの方向性が分かってくるのではないでしょうか。


 3.いろは

打ち込みから入ってくるスピッツにしては珍しい曲。ガンガンと攻めてきています。歌詞の語感が素晴らしく、草野マサムネという詩人の魅力が詰まっている曲です。


 4.さらばユニヴァース

ここで少しペースダウンです。それでも、まだまだポップではなくロック。切ないメロディに乗せる切なく、よくわからない歌詞。隠れた名曲です。


 5.甘い手

一転、バラード系の曲を入れてきました。そして、スピッツには珍しい6分を超える曲です。ブリティッシュぽいメロディに、マサムネの高音が調和した壮大な曲。


 6.Holiday  編曲:スピッツ石田小吉&クジヒロコ

ヤバイ曲。何がやばいかというと歌詞がヤバイ。完全にス〇ーカー。歌詞については全体感想で触れることにします。この曲はアップテンポなメロディがたまらなく狂おしい。ようやくポップな曲が来てファンは安堵したのかな? ファンよりも、普通のリスナーのほうが安堵したのかもしれないですね。このアルバムで2番目にお気に入りの曲。

 

 7.8823

今やライブの定番曲。ブリティッシュロックを想起させる曲で、カッコいいスピッツといえばこの曲を挙げます。静かな入りからサビでギター炸裂!癖になる曲です。


 8.宇宙虫 作曲:三輪徹也

インストゥルメンタル。これまでの騒めきが嘘のようにしんみりと聞かせます。考察をする際に、このアルバムのカギを握る曲だと私は踏んでます。


 9.ハートが帰らない

デュエット曲。切ない感じのする曲です。そして、確実に何かが起こったことを告げている歌詞。サビが圧巻で、とてもいい仕上がりになっていると思います。


 10.ホタル

アルペジオが美しい。ホタルというタイトルがまさにドンピシャの名曲です。せつなくて、それでいて力強い。歌詞が心に突き刺さります。


 11.メモリーズ・カスタム  作曲:草野正宗石田小吉

シングルの『メモリーズ』からロックな方向に進化しました。大サビが加わり、迫力が増しています。でも、私が一番聞いてほしいのはドラムです。めちゃくちゃカッコいいです。崎山さんは隠れた実力者であるということが、一発でわかるロックな曲。

 

 12.俺の赤い星  作曲:田村明浩

ベースのリーダーこと田村作曲。相変わらずロックだー。しかし、歌詞は少々含むところが有り気。ヘヴィな演奏がカッコいい曲です。


 13.ジュテーム?  編曲:スピッツ石田小吉 & 甘健民

マサムネの弾き語りと二胡を用いた切ない名曲。タイトルはフランス語で「愛しています」という意味。また、歌詞がすごい曲で解釈が難しい。感動する曲です。


 14.アカネ

最後を飾るのは「アカネ」。メロディアスで切ない、それでいて強い、そんな一曲。歌詞が大変に素晴らしく、私はスピッツの中で一番好きな曲です。スピッツの魅力がすべて詰まっています。美しい歌詞、ギターのアルペジオ、歌うベース、聴かせるドラム、そして澄んだボーカル。今でも何かあるとこの曲をよく聞きます。

 

 

評価

歌詞:測定不能/10

曲:10/10

演奏:10/10

歌唱:10/10

お気に入り度:測定不能/10

総合:測定不能/50

 

(評価になっていなくてごめんなさい!)

 

その②に続きます。良かったら見てください!

 

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堂場瞬一 『チーム』

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出版年:2008年

出版社:実業之日本社

 

堂場瞬一の『チーム』は、以前から読んでみたいと思っていた本でした。中古で安かったのでおもわず購入。400ページを超える本でしたが、ついつい一気に読んでしまうくらい面白かったです。

 

目次

 

第一部 敗れし者

第二部 敗れざる者

エピローグ

 対談 堂場瞬一×中村秀昭

 

内容紹介

毎年1月2日、3日に開催される箱根駅伝。各大学の誇りと伝統をかけて争われる国民的行事です。その舞台に参加するためには、前大会でシードを獲得する、もしくは10月に開催される予選会を通過する必要があります。記念大会を除けば毎年出場できるのは、シード校と予選会通過校、合わせて20校。

しかし、実際に出場するのは21チーム。残りの1チームとは「関東学連選抜」です。これは予選会で辛くも切符を逃した大学の選手を選出したチームで、各校から一人ずつ、いわばチームの主力選手が選ばれます。監督は予選会で落選したチームの中から最上位だった大学の監督が指揮を執ります。

この本の主人公は、その関東学連選抜「チーム」となります。各校の誇りと伝統がない寄せ集め。その中で選手・監督たちは、何のために、どのようにして、箱根駅伝を闘っていくのでしょうか。陸上競技を描いた傑作です。

 

登場人物

浦大地 ― 城南大の4年生で主将。予選会で城南大は32年間の連続出場が途切れてしまう。浦は学連選抜のキャプテンに選ばれるが、チームワークや昨年の10区での失敗の記憶、古傷の再発といった問題が彼に襲い掛かる。

吉池幸三 ― 美浜大の監督。名監督として名選手を多数指導してきたが、箱根駅伝への出場は叶わなかった。関東学連選抜の監督を務め、チームの目標を「1位」とする。

山城悟 ― 東京体育大の4年生でエース。予選会で留学生より速い記録で1位となった。実力は折り紙付きで、箱根駅伝に3回出場し全てで区間新を叩きだした。性格に少々難があり、チーム内で不和の元凶となる。

門脇亮輔 ― 港学院大の4年生。卒業後は先生になり陸上を続けるかは考えていない。浦の高校時代のチームメイトで飄々としている。学連チームではそこまで意欲的ではない。

朝倉功 ― 東都大の1年生。大学入学後に大きく力を伸ばし、関東学連選抜では2番目に予選会でゴールした。

青木武 ― 城南大の4年生で主務。怪我で選手としては走れなくなり、裏でチームを支える。

 

 

現実の変更点

制度としては2017年現在とは異なる点がいくつかあります。

①名称が「関東学連選抜」→「関東学生連合」

②オープン参加となり、順位が付かない(個人の記録は残る)

実は以前は一つの大学から最大二人選出されたこともありました。しかし、今ではまた一校で一人までとなりました。

現実では関東学連選抜はどうだったのでしょうか。実は2008年に4位を記録しています。この時の監督が青山学院の原晋監督。コーチには明治大学の西弘美監督が就任(正直、明治が予選会落ちしてるほうが不思議だった)。

おそらく堂場さんはこれをかなり参考にしていると思います。結果は全く異なる過程で描かれていますが、チームというものを考える際に役立ったのではないでしょうか。

 

 

感想

さて、この本についてですが、最後まですらすらと読めるくらい読みやすいつくりになっています。登場人物を会話文を中心に描いているので、会話文がかなり多め。若い人にも勧めやすいですね。

中身としては等身大の大学生がよく描かれていると思います。その中での集団としての葛藤と、主人公の浦の個人的な葛藤が実に見事に配置されています。

また、登場人物の色がとても分かりやすいです。会話文中心の場合、人物がどうもカテゴリで分けたような、つまり、妙なキャラ付けによって人物を描いていくことが多いのです。しかし、単なるキャラ付けではなく、陸上に打ち込む普通の大学生がしっかり描かれていて好印象です。

トーリーは正直、先が読める作りとなっています。ミステリーでもないし、そこは気にならないと思います。求められているリアリティはそういう方向ではなく、しっかりと競技に向けられているということですね。

スポーツをしている人というのはやはり何か矜持を持っています。特に山城というキャラクターはそれが色濃く表れていると著者も語っています。ただ、それは山城以外のキャラクターにもしっかりと描かれていて、浦は昨年のリベンジ、朝倉は走っているときの描写、門脇は競技とチームに対する想い、などからそういった部分が見えてきます。

 

ただ、気になったのは第一人称と第三人称の切り替えが結構緩いところと、一区での記録です。

一人称三人称の切り替えというのはあくまでも誰かが決めたルールなので、正解はないとは思いますが、地の文でそれがスムーズにいかない場合、自分の場合、小説というよりドキュメンタリーを追っている気分になります。まあ、会話文が多いこともそう思ってしまう理由の一つでしょう。ただ、読みやすさという点ではこの試みは成功しています。

もっと気になったのはこっち。記録についてです。さすがに1区の記録は早すぎです。現実では佐藤悠基東海大日清食品)が記録した1時間1分6秒。歴代の記録を見ても1時間1分台は2017年現在で9人しかいないのです。個々の名前をみても27分台~28分代前半の選手たちなので、ちょっとここでリアリティが薄まってしまいました。

 

そういえば山城はどうも佐藤悠基と被りますね。3年連続区間新。最後の年にオリンピックランナー早稲田の竹澤に負けましたが、それでも好記録。山城は4年連続区間新。すごい選手です。

悲しいのはこの小説で名門として描かれている中央大がついに出場記録が途切れたことですね。この小説で描かれている「何のために走るのか」、その最たる「チームの伝統を背負って走ること」がいかに大切だったのか、逆説的に証明してしまいました。

持論になりますが、伝統というのは革新の連続である、と私は考えています。日本の伝統工芸や伝統芸能などは歴史を追ってみると、革新をして何とか生き残ってきました。それがなされなくなった時、伝統はどんどん重荷としての役割しか演じないでしょう。伝統という言葉を耳にする機会が増えてきたら、黄色信号の証のように思います。

伝統という言葉は貯金しておくものなんですね。下ろし始めたら危ない。同様のものとしては学歴なんてものも挙げられるでしょう。学歴なんかも武器というよりは、盾なんだと思います。

 

話がずれてしまいましたが、この『チーム』はおススメの一冊です。あまり活字に触れない人でもとても読みやすいと思います。是非手に取ってみてはいかかでしょう。

 

最後までご覧くださりありがとうございました。

 

 

 

スピッツ シングルコレクション第三弾発売決定!

spitz-web.com

 

スピッツのシングルコレクション第三弾の発売が告知されました!また、アルバム16作品のアナログ盤も発売されます!

スピッツも結成30周年ということで、もう大御所といっても差し支えないほどのキャリアになりました。しかし、それを微塵も感じさせないのが「スピッツ」なんですよね。

ちなみに前にアルバムレビューをした安全地帯もデビュー35周年べストアルバムを出します。そして玉置浩二ソロの30周年ベストアルバムも同時にリリースされるようです。

スピッツの結成と玉置浩二のソロは、実は時を同じくしていたんですね。時代的にはかなり違う印象だったのですが。

 

さて、本題に戻ります。このシングルコレクションは以前に発売した『CYCLE HIT 1991-1997 Spitz Complete Single Collection』、『CYCLE HIT 1997-2005 Spitz Complete Single Collection』に、『CYCLE HIT 2006-2017 Spitz Complete Single Collection』が加わり、3枚一組の形で発売されるようですが、それぞれ単品の販売もあるそうです。

つまり、『1991-1997』と『1997-2005』を持っている人は『2006-2017』だけを買うのでも十分です。しかし、やはりまとめて全部入っている『1991-2017』を購入するのがいいのではないでしょうか。

 

というのも、理由は2つあります。

 

①選曲・曲順は同じだが、新たにリマスターされている。

②価格がなんと4,212円と安い!

 

かなりお買い得だと思います。

これまでスピッツにあまり興味を持ってこなかった人にも、長年のファンにもとても良い一枚になりそうです。

 

一応補足ですが、これはあくまでシングルコレクションなんですね。彼らには依然『RECYCLE』というべストアルバムが存在していました。しかし、それはスピッツのメンバーに不意打ちという形で発売が決定したもので、この事件は「マイアミショック」と呼ばれています。

しかし、そうして発売されたアルバムが200万枚を超えるセールスを記録。スピッツからしたら、「バン解散までベストアルバムは出さない」という方針を大人の事情でつぶされた上に売れに売れてしまうという、うれしいような悲しいような結果。レーベルを移籍することにもつながりました。

それからしばらくたった2006年に『1991-1997』『1997-2005』が発売され、しっかりとけじめをつけることにしたそうです。『RECYCLE』は製造を終了します。

ですから、これはベストアルバムではない、ということはファンの一人として、付記しておきたいと思います。

 

最後までありがとうございました。