堂場瞬一 『チーム』

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出版年:2008年

出版社:実業之日本社

 

堂場瞬一の『チーム』は、以前から読んでみたいと思っていた本でした。中古で安かったのでおもわず購入。400ページを超える本でしたが、ついつい一気に読んでしまうくらい面白かったです。

 

目次

 

第一部 敗れし者

第二部 敗れざる者

エピローグ

 対談 堂場瞬一×中村秀昭

 

内容紹介

毎年1月2日、3日に開催される箱根駅伝。各大学の誇りと伝統をかけて争われる国民的行事です。その舞台に参加するためには、前大会でシードを獲得する、もしくは10月に開催される予選会を通過する必要があります。記念大会を除けば毎年出場できるのは、シード校と予選会通過校、合わせて20校。

しかし、実際に出場するのは21チーム。残りの1チームとは「関東学連選抜」です。これは予選会で辛くも切符を逃した大学の選手を選出したチームで、各校から一人ずつ、いわばチームの主力選手が選ばれます。監督は予選会で落選したチームの中から最上位だった大学の監督が指揮を執ります。

この本の主人公は、その関東学連選抜「チーム」となります。各校の誇りと伝統がない寄せ集め。その中で選手・監督たちは、何のために、どのようにして、箱根駅伝を闘っていくのでしょうか。陸上競技を描いた傑作です。

 

登場人物

浦大地 ― 城南大の4年生で主将。予選会で城南大は32年間の連続出場が途切れてしまう。浦は学連選抜のキャプテンに選ばれるが、チームワークや昨年の10区での失敗の記憶、古傷の再発といった問題が彼に襲い掛かる。

吉池幸三 ― 美浜大の監督。名監督として名選手を多数指導してきたが、箱根駅伝への出場は叶わなかった。関東学連選抜の監督を務め、チームの目標を「1位」とする。

山城悟 ― 東京体育大の4年生でエース。予選会で留学生より速い記録で1位となった。実力は折り紙付きで、箱根駅伝に3回出場し全てで区間新を叩きだした。性格に少々難があり、チーム内で不和の元凶となる。

門脇亮輔 ― 港学院大の4年生。卒業後は先生になり陸上を続けるかは考えていない。浦の高校時代のチームメイトで飄々としている。学連チームではそこまで意欲的ではない。

朝倉功 ― 東都大の1年生。大学入学後に大きく力を伸ばし、関東学連選抜では2番目に予選会でゴールした。

青木武 ― 城南大の4年生で主務。怪我で選手としては走れなくなり、裏でチームを支える。

 

 

現実の変更点

制度としては2017年現在とは異なる点がいくつかあります。

①名称が「関東学連選抜」→「関東学生連合」

②オープン参加となり、順位が付かない(個人の記録は残る)

実は以前は一つの大学から最大二人選出されたこともありました。しかし、今ではまた一校で一人までとなりました。

現実では関東学連選抜はどうだったのでしょうか。実は2008年に4位を記録しています。この時の監督が青山学院の原晋監督。コーチには明治大学の西弘美監督が就任(正直、明治が予選会落ちしてるほうが不思議だった)。

おそらく堂場さんはこれをかなり参考にしていると思います。結果は全く異なる過程で描かれていますが、チームというものを考える際に役立ったのではないでしょうか。

 

 

感想

さて、この本についてですが、最後まですらすらと読めるくらい読みやすいつくりになっています。登場人物を会話文を中心に描いているので、会話文がかなり多め。若い人にも勧めやすいですね。

中身としては等身大の大学生がよく描かれていると思います。その中での集団としての葛藤と、主人公の浦の個人的な葛藤が実に見事に配置されています。

また、登場人物の色がとても分かりやすいです。会話文中心の場合、人物がどうもカテゴリで分けたような、つまり、妙なキャラ付けによって人物を描いていくことが多いのです。しかし、単なるキャラ付けではなく、陸上に打ち込む普通の大学生がしっかり描かれていて好印象です。

トーリーは正直、先が読める作りとなっています。ミステリーでもないし、そこは気にならないと思います。求められているリアリティはそういう方向ではなく、しっかりと競技に向けられているということですね。

スポーツをしている人というのはやはり何か矜持を持っています。特に山城というキャラクターはそれが色濃く表れていると著者も語っています。ただ、それは山城以外のキャラクターにもしっかりと描かれていて、浦は昨年のリベンジ、朝倉は走っているときの描写、門脇は競技とチームに対する想い、などからそういった部分が見えてきます。

 

ただ、気になったのは第一人称と第三人称の切り替えが結構緩いところと、一区での記録です。

一人称三人称の切り替えというのはあくまでも誰かが決めたルールなので、正解はないとは思いますが、地の文でそれがスムーズにいかない場合、自分の場合、小説というよりドキュメンタリーを追っている気分になります。まあ、会話文が多いこともそう思ってしまう理由の一つでしょう。ただ、読みやすさという点ではこの試みは成功しています。

もっと気になったのはこっち。記録についてです。さすがに1区の記録は早すぎです。現実では佐藤悠基東海大日清食品)が記録した1時間1分6秒。歴代の記録を見ても1時間1分台は2017年現在で9人しかいないのです。個々の名前をみても27分台~28分代前半の選手たちなので、ちょっとここでリアリティが薄まってしまいました。

 

そういえば山城はどうも佐藤悠基と被りますね。3年連続区間新。最後の年にオリンピックランナー早稲田の竹澤に負けましたが、それでも好記録。山城は4年連続区間新。すごい選手です。

悲しいのはこの小説で名門として描かれている中央大がついに出場記録が途切れたことですね。この小説で描かれている「何のために走るのか」、その最たる「チームの伝統を背負って走ること」がいかに大切だったのか、逆説的に証明してしまいました。

持論になりますが、伝統というのは革新の連続である、と私は考えています。日本の伝統工芸や伝統芸能などは歴史を追ってみると、革新をして何とか生き残ってきました。それがなされなくなった時、伝統はどんどん重荷としての役割しか演じないでしょう。伝統という言葉を耳にする機会が増えてきたら、黄色信号の証のように思います。

伝統という言葉は貯金しておくものなんですね。下ろし始めたら危ない。同様のものとしては学歴なんてものも挙げられるでしょう。学歴なんかも武器というよりは、盾なんだと思います。

 

話がずれてしまいましたが、この『チーム』はおススメの一冊です。あまり活字に触れない人でもとても読みやすいと思います。是非手に取ってみてはいかかでしょう。

 

最後までご覧くださりありがとうございました。

 

 

 

スピッツ シングルコレクション第三弾発売決定!

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スピッツのシングルコレクション第三弾の発売が告知されました!また、アルバム16作品のアナログ盤も発売されます!

スピッツも結成30周年ということで、もう大御所といっても差し支えないほどのキャリアになりました。しかし、それを微塵も感じさせないのが「スピッツ」なんですよね。

ちなみに前にアルバムレビューをした安全地帯もデビュー35周年べストアルバムを出します。そして玉置浩二ソロの30周年ベストアルバムも同時にリリースされるようです。

スピッツの結成と玉置浩二のソロは、実は時を同じくしていたんですね。時代的にはかなり違う印象だったのですが。

 

さて、本題に戻ります。このシングルコレクションは以前に発売した『CYCLE HIT 1991-1997 Spitz Complete Single Collection』、『CYCLE HIT 1997-2005 Spitz Complete Single Collection』に、『CYCLE HIT 2006-2017 Spitz Complete Single Collection』が加わり、3枚一組の形で発売されるようですが、それぞれ単品の販売もあるそうです。

つまり、『1991-1997』と『1997-2005』を持っている人は『2006-2017』だけを買うのでも十分です。しかし、やはりまとめて全部入っている『1991-2017』を購入するのがいいのではないでしょうか。

 

というのも、理由は2つあります。

 

①選曲・曲順は同じだが、新たにリマスターされている。

②価格がなんと4,212円と安い!

 

かなりお買い得だと思います。

これまでスピッツにあまり興味を持ってこなかった人にも、長年のファンにもとても良い一枚になりそうです。

 

一応補足ですが、これはあくまでシングルコレクションなんですね。彼らには依然『RECYCLE』というべストアルバムが存在していました。しかし、それはスピッツのメンバーに不意打ちという形で発売が決定したもので、この事件は「マイアミショック」と呼ばれています。

しかし、そうして発売されたアルバムが200万枚を超えるセールスを記録。スピッツからしたら、「バン解散までベストアルバムは出さない」という方針を大人の事情でつぶされた上に売れに売れてしまうという、うれしいような悲しいような結果。レーベルを移籍することにもつながりました。

それからしばらくたった2006年に『1991-1997』『1997-2005』が発売され、しっかりとけじめをつけることにしたそうです。『RECYCLE』は製造を終了します。

ですから、これはベストアルバムではない、ということはファンの一人として、付記しておきたいと思います。

 

最後までありがとうございました。

 

 

WANDS 「PIECE OF MY SOUL」

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発売年月日:1995年4月24日

週間最高順位:1位

売上:96.4万枚

1995年度のアルバム売上枚数:年間16位

 

議論を巻き起こした、WANDSの4枚目のアルバムです。

 

収録曲 (青字はシングル曲)

 

  1. FLOWER
  2. Love&Hate
  3. 世界が終るまでは…
  4. DON'T TRY SO HARD
  5. Crazy Cat
  6. Secret Night~It's My Treat~
  7. Foolish OK
  8. PIECE OF MY SOUL
  9. Jumpin' Jack Boy~Album Version~
  10. MILLION MILES AWAY

 

作品紹介

収録シングルは 3.世界が終るまでは…、6.Secret Night~It's My Treat~、9,Jumpin' Jack Boy~Album Version~ の三曲。英語のタイトルが目立ち、アルバムの雰囲気がそれまでのものと大きく変わっている。それまでのWANDSのファンからは賛否両論らしい。

発売されると、2週連続1位、90万枚以上の売り上げ、年間16位などを記録しました。これまで通り、売上的にもWANDは安定したセールスを記録しました。

しかし、シングル曲の売上は急落していきます。「世界に終わるまでは…」はミリオンセラーを記録しましたが、「Secret Night~It's My Treat~」で売上が半減。その後売上はさらに落ち込んでいき、上杉と柴崎の脱退もあり、WANDSは表舞台から姿を消していきます。いわゆる第二期WANDSの最後の一枚、という位置付けのアルバムになります。

 

曲の感想

 1.FLOWER  作詞:上杉昇 作曲:柴崎浩 編曲:葉山たけし

度肝を抜かれた一曲。グランジオルタナティブ・ロックが融合した、ヘイトを昇華させている名曲です。自嘲した歌詞と、ダークな雰囲気がこのアルバムがこれまでと異なることをよく表しています。

 2.Love & Hate  作詞:上杉昇 作曲:柴崎浩 編曲:葉山たけし

一転変わって、ポップな曲調。昔からのファンはイントロを聞いて安堵したのではないでしょうか。しかし上杉の声が聞こえてくると、また困惑したのでは。歌詞は全編にわたって孤独を描いています。しかし、未来に向けた意志が垣間見えるんですよね。個人的にはこのアルバムを一番表しているのはこの曲だと思います。

 3.世界が終るまでは…  作詞:上杉昇 作曲:織田哲郎 編曲:葉山たけし

スラムダンクのEDテーマとして有名ですね。唯一の日本語タイトル。名曲です。この曲もまた歌詞が強烈。それまでのWANDSから大きく転換し、ロックなサウンドを前面に出したバラードとなっていて、この曲あたりからやりたいことができるようになってきたのかな、と感じる一曲。

 4.DON'T TRY SO HARD  作詞:上杉昇 作曲:柴崎浩 編曲:葉山たけし

アコギ主体の一曲。シンプルな曲ですが奥が深い。歌詞は幼き頃の自分と現在の自分を対比している。夢に向かっていく上杉の姿がだんだんと見えてきます。勘のいい人はこのあたりでWANDSをやめていくのだと思ったのではないでしょうか。

 5.Crazy Cat  作詞:上杉昇 作曲:柴崎浩 編曲:葉山たけし

挑戦状という印象。そして、それが「僕ら」であり、一人ではないということが描かれています。これもまたロックですな。

 6.Secret Night~It's My Treat~  原曲:栗林誠一郎「IT'S MY TREAT」

 作詞:上杉昇 作曲:栗林誠一郎 編曲:池田大介

やっちまったよこいつら…。それまでの売れ線テクノポップから本格的にグランジオルタナティブへ行っちゃった。そこが堪らなく素晴らしい!彼らのやりたい音楽がこの曲から少しずつ見えてきたはず。低い音からサビにかけて高音になっていき、サビで最高潮へ達する構成は見事。歌詞は焦燥感というかじれったさが見えてきます。「もう待てない」が本当のことになってしまいました。

 7.Foolish OK  作詞:上杉昇 作曲:柴崎浩 編曲:葉山たけし

最初は5.Crazy Catのような挑戦状かと思っていたら、「生きること」を描いているのだと気が付きます。おそらく、自殺した若い人が社会問題になっていたのもあって、様々なメッセージをちりばめたのではないでしょうか。上杉自身も葛藤を繰り返す一人の若者でした。

 8.PIECE OF MY SOUL  作詞:上杉昇 作曲:柴崎浩上杉昇 編曲:葉山たけし

表題曲。ロックという夢への想いが見えてくる曲です。そして覚悟を決めている様子がうかがえます。少ない音から入ってサビでドーンと来るのが最高!

 9.Jumpin' Jack Boy  作詞:上杉昇 作曲:栗林誠一郎 編曲:葉山たけし

シングル盤と大きく変わってロック調です。それでも疾走感は変わらず。タイトルは実はすごい。自らをジャンピングジャック=糸繰り人形に例えて、中身はラブソングっぽい。考えてやったのだとしたら相当皮肉です。

 10.MILLION MILES AWAY  作詞:上杉昇 作曲:木村真也 編曲:葉山たけし

キムシン作曲。珍しいですね。強い決意が見えてくる歌詞。壮大なサウンド。どれが欠けても名曲とはなりえないんですよね。アルバムの最後を飾るのにふさわしい所信表明といったところか。特に私が好きなのは歌詞とアウトロです。もう完璧と言って差支えがない。

 

全体感想

大きく変貌を遂げたWANDSでしたが、それまでの良さはしっかりと生かしている一枚となりました。曲名をサビに持ってきたり、ポップなシンセサイザーもあったり、完全に過去を否定したわけではないんですね。自分たちのやりたいことと求められていることとが、うまく混じりあう不思議なアルバムです。

 何より驚くべきなのは、まだこの時上杉は22歳!20代前半にしてミリオンヒットを連発して、世の中の酸いも甘いも噛み分けてしまった。それでもつぶれずに自らの夢をかなえるためにWANDSを脱退するといのはまさにロックですね。

95年はそれまでのビーイングの勢いが落ち始めて、小室やミスチルスピッツなどに中心が移っていきます。実は上杉は彼らたちより若かったんですよね。本当にすごいと思います。

95年というと阪神淡路大震災地下鉄サリン事件と立て続けに大きな出来事が発生し、戦後日本の転換点といわれることもあります。この年ブレイクしたスピッツ草野マサムネなんかも、そうした出来事が歌詞や曲に影響したということを言っていたと思います。おそらく上杉も思うところがあったのではないでしょうか。

アルバムから離れてしまいました。全体的にはやはりダークな印象。それでも一曲一曲がよくまとまっていて、全体でみてもきれいにまとまっています。それでも、何かに負けそうな気持になったり、挑戦したいときに真っ先に聞く一枚です。ただ暗いだけではなくて、そこに強い「意志」があるんですよね。今の自分より若い年齢でこれだけのアルバムを世に出した上杉昇という男に強い共感を覚えることで、自分はまだまだやれる!という気持ちになれます。

95年は名盤が多かった年ですが、このアルバムはその中でもトップクラスのアルバムと言っていいでしょう。個人的にはスピッツの「ハチミツ」と同率1位です。これだけのアルバムが中古屋で100円程度で売られているとは信じられません。ぜひ、聴いてみることをおススメします。

 

評価

歌詞:10/10

曲:10/10

演奏:10/10

歌唱:10/10

お気に入り度:10/10

総合:50/50

 

最後までご覧くださりありがとうございました。

 

安全地帯 「安全地帯Ⅳ」

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発売年月日:1985年

LP、CT:11月24日  CD:12月10日

週間最高順位:1位

売上:93.9万枚

1986年度のアルバム売上枚数:年間1位

 

大ヒットを飛ばした安全地帯の4枚目のアルバムです。

全曲が作詞:松井五郎、作曲:玉置浩二編曲:星勝・安全地帯、となっています。

 

収録曲 (青字はシングル曲)

  1. 夢のつづき
  2. デリカシー
  3. 碧い瞳のエリス
  4. 合言葉
  5. こしゃくなTEL.
  6. 消えない夜
  7. 悲しみにさよなら
  8. 彼女は何かを知っている
  9. ガラスのささやき
  10. ありふれないで

 

作品紹介

収録シングルは 7.悲しみにさよなら3.碧い瞳のエリス の2曲。どちらも好セールスを記録したことから、アルバムへの期待も高まっていたことが想像されます。

実際に発売すると、週間1位、90万枚を超える売上、86年度のアルバム売上年間1位と、安全地帯がトップアーティストとしての地位を確立する一枚となりました。

 

曲の感想

 1.夢のつづき

1曲目からバラードで少々びっくりしました。しかも、安全地帯のイメージと違って明るい曲ときた。

本当にしっとりとしていて優しい、歌詞・メロディー・歌唱・演奏で、素晴らしい一曲に仕上がっています。

 2.デリカシー

いや~、たまりませんなあ。囁きかける玉置浩二の声から入り、Bメロで少し張り上げて、サビでまた囁く。どこか淫靡な香りを漂わせながら、タイトに刻まれていくリズム。安全地帯の魅力がこれでもかと詰まった一曲。

 3.碧い瞳のエリス

ヒットシングル。CMでも起用されています。今度はちょっと暗めのバラードで、少女を意識したような印象です。アルバムの中だと少しパンチが弱いかな。

 4.合言葉

非常にメロディアスな一曲。幻想的な音を奏でるギターが特徴的。「安全地帯Ⅴ」以降の片鱗を感じます。

 5.こしゃくなTEL.

一転変わって、明るい曲に。ライブだと早めの仕上がりですが、アルバム版はミドルテンポくらいとなっています。すごくはっちゃけてるので、個人的にはライブのほうが好み。

 6.消えない夜

しっとりとしたまさに、これぞ夜の曲。満月が似合います。儚くて幻想的な消え入りそうな美しさがあふれ出てきているような仕上がりです。メロディが純粋に素晴らしいです。

 7.悲しみにさよなら

大ヒットシングル。安全地帯の暗いイメージはこれで払しょくされたのかな? この曲は歌詞が大好きです。男と女の優しさと怖さがふんだんに描かれていて、大人の世界を感じます。あと、転調するところがたまらなく好きですね。そりゃあ、この曲は売れるわ。

 8.彼女は何かを知っている

意味深なタイトルです。曲もちょっと不思議な入り方をしますが、そのあとのメロディーが本当にきれい。アップテンポなのにメロディーがきれいに残っていて、本当に天才の一言としか言えません。

 9.ガラスのささやき

謡曲よりの曲ですね。サビの最後の方がとても素敵。切ないメロディーの中に悲しい歌詞が歌われていて、グッとくるものがあります。

 10.ありふれないで

歌詞に載っていない、「抱きしめてもいいだろう~♪」から入る曲。ちょっと驚きますが、曲を聴いてその素晴らしさにまた驚く。そして、タイトルの「ありふれないで」が本当に響く。2番の頭に出てくるこの詩で、いつもこみあげてくるものがあります。名盤の最後を飾るのにふさわしい一曲です。

 

全体感想

たった10曲に濃密な時間が詰まっていて、完成度が高い隙の無いアルバムです。曲の配置も申し分なく、歌詞、メロディー、演奏、歌唱と、どれをとっても最高水準にあります。

86年度の年間1位になるのも大納得です。それどころか、80年代で10枚アルバムを選べと言われたら、間違いなく入れなければ入れない一枚といっても差し支えない。

古臭いアレンジがなされていないのも好印象。そこにバンドとしての安全地帯の凄さを垣間見ることができます。次の「安全地帯Ⅴ」は少し雰囲気が変わり、バンドというよりプロジェクトだったと、本人たちが語っていることからバンドとしての安全地帯を聞きたい人に最高の一枚となること間違いなしです。

もし安全地帯のアルバムで迷っていたら、ぜひともこのアルバムから聞いてみるのをおススメします。絶対に損はしません。まあ、安全地帯は全アルバムが高い水準ですので順を追ってみるのもアリだと思います。

 

評価

歌詞:10/10

曲:10/10

演奏:10/10

歌唱:10/10

お気に入り度:10/10

総合:50/50

 

 

 

最後までご覧くださってありがとうございました。

 

 

 

 

吉野源三郎 著『君たちはどう生きるか』

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出版年:1937年

出版社:新潮社

「日本少国民文庫」の最終巻として出版された本です。私が読んだ岩波文庫版は丸山真男の回想付きで、おそらく岩波版が一番入手しやすいのでおススメ。

 

目次

 

 まえがき

一、へんな経験

二、勇ましき友

三、ニュートンの林檎と粉ミルク

四、貧しき友

五、ナポレオンと四人の少年

六、雪の日の出来事

七、石段の思い出

八、凱旋

九、水仙の芽とガンダーラの仏像

十、春の朝 

 

『君たちはどう生きるか』は全部で10章構成です。その中に、「おじさんのノート」という話も付属しています(むしろメインか)。

また、丸山真男の「『君たちはどう生きるか』をめぐる回想」が本編のあとに掲載されています。これも一読すべし。本編より先に読んでみるのもいいかもしれません。

明瞭な語り口で、思春期の学生たちに特有の、疑問・葛藤・友情・格差といった様々な要素をふんだんに使って、物語が進んでいきます。そしてすべてを読み終えたとき、コペル君と同じように読者も大きく成長している、という点にこの本の素晴らしさがあるように思えます。

 

この作品の時代背景

この話にも触れておきたい。1937年といえば盧溝橋事件が発生し、日中戦争へと突入していった年です。これ以前から日本(本土・外地問わず)では軍靴の音が近づいてきていました。1936年に二・二六事件が発生し、高橋是清斎藤実らが殺害され、岡田内閣が総辞職。広田・林内閣を経て近衛内閣が成立。そしてついにその時が来てしまった、という時に出版された作品です。

徐々に言論と思想が統制されていき、かくあるべきという教えのみが正しいという時代に突入しました。同じ年(1937年)、人民戦線事件で多数の人々が検挙されています。そのような状況で「ヒューマニズム」を訴え続けた吉野源三郎。彼自身、1931年に治安維持法事件で逮捕されています。(共産主義ヒューマニズムとでは同一にできないとは思いますが、思想統制という意味では重要だっただろう、という意味で並べています)

吉野源三郎のメッセージを当時の人々はどう受け取ったのでしょうか。

80年たった2017年でも、それは変わらないのでしょうか。人の心は変わらないと私は信じたいです。

 

主な登場人物

コペル君 ― 本名、本田潤一。背は低いが頭がよく運動も得意。級長にはなれないが、人望はないわけではない。

おじさん ― 法学士。母親の弟なので叔父にあたる。コペル君という名前の名付け親。

北見君 ― 仲の良い友人。ガッチン。背が低いが、ガッチリとしていて性根は素直でまっすぐ。早稲田びいき。

水谷君 ― 仲の良い友人。背が高くすらっとしている。小学校時代からの同級生。お金持ちであるが、気取るところはない。慶応びいき。

浦川君 ― 仲の良い友人。物語の途中から仲良くなる。優しい男の子。

 

この登場人物のなんと生き生きとしたことか!他の人々もとってもいいんですよね。

特に印象的なのが北見君。自分の間違いを素直に認めたり、友達のために級友とも喧嘩をしたりと、間違っていると思うものに毅然と立ち向かえる強さを持っているナイスガイ。

 

感想

この作品については私が語るよりも素晴らしい書評がたくさん出ているので、そちらを読むことをおススメします。

昔にも読んだことのある作品です。しかし、大人になってから読んでもやはり学ぶことの多さについつい頭が下がります。そして、自分が昔から変わってもいるし変わってもいないのだとわかりました。

ひとつ不思議だったのは、昔はもっと明確におじさんという人物像を描けていたような気がしたのに、改めて読んでみたらおじさんという人物が昔よりもはっきりとしないことでした。これは何故なのでしょう?考えてみることにしました。

 

自分がこの作品に惹かれたのはやはりタイトル。『君たちはどう生きるか』というタイトルからすでに、読んでみたい気持ちになりました。なんとなく「べき論」とか「釈迦に説法」といった内容なのかしら、と思ったものですが決してそんなことはなく、最後に一つの問いかけをして終わりを迎えるその言葉こそ「君たちはどう生きるか」なんですよね。

ひとりひとり人間には少年時代があり、大人になっていくという営みの中で発芽していく感情や葛藤や迷いが、さらに作品を魅力的なものにしていきます。主人公・コペル君を通じて描かれる、少年時代に特有の自由な発想力と徐々に大人になっていく過程を難しい言葉ではなく、だれにでも存在していたような身近な出来事から描いてゆく。内容も素晴らしいのですが、構成が非常に素晴らしいですね。

おじさんのノートを通じて説明されるコペル君が経験した出来事の数々。子どもの感じたことを、大人のおじさんが大人の言葉で補っているという点に素晴らしさが見て取れます。このことは「社会科学的認識」という言葉を本の表紙でも指摘されていますが、単におじさん一人の個人的な言葉ではないのですね。

本文でも触れられていますが、地球が誕生し、様々な生物が誕生し、人間が誕生して今日の我々に至るまでの間には大きな歴史の川が存在しています。その中で培われてきたものを、学問や宗教や倫理や規範という形で今の我々は理解できるようになりました。それはやはり教育や学習による成果なのでしょう。

それを一個人としてではなく、社会全体の立場から考えてみたときに、「社会科学的認識」が重要になってきます。社会科学とはまさに学問の類型の一つのように思えますが、その一つ一つはこれまでの一人一人の人間が経験してきたことに他なりません。ただ、それは相対主義であるということを意味していないということは、すぐお分かりになると思います。

自分が経験した出来事が他の人と比べて上だ下だということではないということですね。身分でいえば確かにお金持ちや貧乏というものはあるし、運動のできる・できないもあるし、勉強ができる・できないもあります。

しかし、それは「自分から見たら」の世界、もしくは特定の狭い世界での話題で終わってしまうことがほとんどです。自己中心的な子供の世界のことが本文では説明されています。自己中心的ではなく、広大な歴史という川の流れの中で、位置を明確にし、それが何を過去に生み出してきて、これから何を生み出せるのか。「社会科学的認識」の意義はあくまで未来を向いているのですね。

おじさんの言葉は歴史の中で紡がれてきたこれまでの人々の総体に他なりません。子どものころ読んだ時より、大人になって読んだときのほうがおじさんという一個人がどんな人なのか、ということが分かりにくいと感じるようになるのは、おじさんが歴史的な様々な知識や知恵の結晶、それ自体であるからなのでしょう。(逆に子供のころは、自分の叔父や伯父の姿かたち言葉でこの作品のおじさんを想像しているということですね)

 

ちょっとおじさんについて熱く語ってきましたが、実は自分がこの作品で好きな理由は2つあります。友人同士の友情と、力強さです。

友人同士の友情は漫画やドラマやアニメなどでよく描かれるものですね。しかし、この作品の友情は読者に強烈な共感を抱かせます。やはり、過去に似たような経験をしている人が多いからなのでしょうか。それとも吉野源三郎自身がおそらく経験した出来事の生々しさがよく表れているからなのでしょうか。いずれにせよ普遍性を持っているんですよね。

特に約束を破ってしまったコペル君と北見君たちが顔を合わせたシーンがいいんですよね。自分の弱さを認めて謝ったコペル君。そして、それを許してくれた北見君たち。

何がいいって、対面しただけで急にコペル君が明るさを取り戻していくのがいいんですね。言葉を超えたところに彼らの友情が昇華したことを感じさせるシーン。自分もこんな風な作品を書いてみたいです。

そして力強さですが、まずは弱さについて。本文でもおじさんのノートで書かれていますが、弱いことで不幸になってしまう人もいるんですよね。しかし、一つがだめだからと言って全部がだめなわけではないと。浦川君は学校で居眠りばっかりで成績もよくないし、運動もだめだし、お金持ちの多い学校なのに貧乏だしと、コペル君との格差が描かれています。でもコペル君はそうした面で浦川君を決めつけるのではなく、自分がまだできていない「生産関係」を立派に果たしている友人として見ています。

浦川君はそれを誰かに自慢するようなことはしてきませんでした。でも、コペル君に「店にあるモーターを運転させてあげよう」と約束をしたのを見ると、無意識にちょっと自慢してみたかったのかな、なんて思います。そこに自分は浦川君の力強さを感じたんです。だから、きっと浦川君は将来は立派な人になったんだろうと思います。

力強さといえば、水仙の芽の話。掘って掘ってようやく根を掘り出せた場面です。これは人間関係としても、膨大な歴史にしても、一個人にしても解釈できる話だと思います。それはこれまで描かれてきた話がいかに、大切なものであったのかを、自覚させるものでした。

 

話がまとまり切りませんが、まあこの辺で感想を終わりたいと思います。

最後まで閲覧ありがとうございました。

 

 

 

自分がよく購入する100円均一商品 ①

初っ端から素寒貧な話題を!

 

その① Comic入れ

サイズ:240×220×140

 

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靴下やインナーはまとめて入れておきたい。そんな時にちょうどいいのでついつい買ってしまう商品の登場だー!

おおっと蓋にくぼみが。上から重ねると・・・・・・?

 

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ハマったー!!!

 

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これは使える!積み重ねれば、狭いスペースを有効に使えるぞー!

 

 

その② 雑貨入れ

サイズ:120×110×80

 

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コンパクトだが色々なことに利用できるアイテムだ!

 

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自分の場合はスマホ×2、ガラホを置くのに使ってるぞー!何台か所有している人にはおススメだ!

 

 

その③ キッチンシェルフ(コの字ラック)

サイズ:390×240×180

 

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これまた使い勝手のいいアイテムだー!キッチンでもないのになぜか3つも部屋にあるぞ!

 

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自分の場合は、ノートパソコン(VAIO)とマウスを、布団で寝っ転がって使うのに活用してるぜ!

 

 

 

 

今回はこの3つでおしまい。100均の可能性は無限大だーーーーーっ!!!

 

 

(勢いで誤魔化しているのは実は内緒だ。まじめにやります。はい。)

最後までありがとうございました。

 

その1 当ブログの開設の目的

このブログではいろいろな商品の感想を綴っていきたいと思います。

主に音楽、書籍、アニメ、ゲーム、安い商品などなど。

後は気になったニュースなどがあればメモ代わりに。

良かったら見てやってください。