『フィリッピーナを愛した男たち』(1992年)ドラマ(映画)

 かなり間が開いてしまいましたが、元気でやってます。

 

 さて、今回はドラマ。

 ドラマといっても連続ドラマではなく、テレビ映画のような一話完結の作品です。

 Youtubeの「チャンネル桜」様にて、視聴することが出来ます。

 

 

『フィリッピーナを愛した男たち』

 

放送日:1992年12月11日

制作:フジテレビ

監督:水島聡

主演:玉置浩二ルビー・モレノ

 

あらすじ

 ふとん屋の営業マン敏夫(玉置浩二)は、借金が嵩んで妻に逃げられてしまう。その寂しさを紛らわすために立ち寄ったフィリピンパブで、マニラ出身のルビー(ルビー・モレノ)と出会う。福島に母(中村玉緒)を残して上京した敏夫と、フィリピンに家族を残して出稼ぎに出てきたルビーは、寂しさを共有しながら 互いに惹かれ合っていくが...

(引用:https://www.youtube.com/watch?v=AMBQgLotsso

 

感想

 放送されたのが1992年ということで、バブルの余韻が残りつつも、その酔いも冷めてきた頃合いです。

 私は当時生まれたばかりなので詳しい状況については知りえていませんが、当時は「ジャパユキさん」なんて言葉があったように、日本に出稼ぎにきたアジアの人たちと結婚した人もいたそうですね。

 それとは別に、外国で売春をしているサラリーマンもそれなりにいたと聞きます。

 今はどこの国でも厳しい取り締まりが行われているそうなので、あまりそういう話も聞かなくなりましたね。

 

 さて、この作品についてですが、私が興味を持ったきっかけをまず簡単に。

 私は玉置浩二の大ファンです。歌はもちろん、その演技にも朴訥なところが出ていて、とても好きです。ただ、この時期の玉置浩二といえば、安全地帯の活動停止、セールスがかなり落ち込みを見せ、健康問題では病気を患ることもあったようで、かなり消耗していたようです。

 その玉置さんはこの時期から「俳優」としての露出がかなり増えていきます。そして、そのどれもが印象的な演技でした。例えば1994年の『最後の弾丸』と『夢の帰る場所』なんかは本当に何度見ても圧倒されます。

 『夢の帰る場所』は『フィリッピーナを愛した男たち』の監督、水島聡さんが脚本を務められており、この作品も素晴らしいですがまたそれは後で。先に『夢の帰る場所』を視聴していたこともあり、同じ人が制作しているのなら、と『フィリッピーナを愛した男たち』にも興味を持ったというわけです。

 

 やっと本題。

 とても面白く、時にはほろりと観させていただきました。

 主人公の日本人である敏夫と、ヒロインであるルビー、そして敏夫の母親がとても印象的です。玉置浩二がああいう役を演じると、本当に素晴らしい。

 とても好きな場面は、ルビーが風鈴を持ってきた場面です。主人公の敏夫に感情移入している視聴者は「何故のこのこと来られるんだ!」と憤る場面です。しかし、この風鈴を持ってくるということは、少なくともルビーは日本の夏をしっかり知っている。文化を受け入れて認めていることがわかります。

 逆にどうでしょう。当時の日本からしてみれば、フィリピンは自分たちよりも遅れた国。その国の文化をしっかりと受け入れられた人は当時どれだけいたでしょう。最終的には、敏夫はフィリピンに骨を埋める覚悟で結婚します。それによって、フィリピンという国を受け入れたとみることが出来るでしょうね。

 他にも、今作品内ではかなりわかりやすく対比がなされています。男と女、日本とフィリピン、家族に対する扱い等々。

 フィリピン人について。「嘘つきで、怠け者だ」という人がいる。家族のためには、自らをビジネスに使ってでも助けようとする。ある意味一生懸命といえますね。堕胎することは禁止されている。カトリックが多いですからね。フィリピンは徹底して貧乏のように描かれています。それでも、みんなで分け合って仲良くしている。結婚も親の了承が必要。ただ、敏夫を売って店を手に入れたような輩もいます。

 日本人について。「浮気で、騙される」という人がいる。母親の財産を結局のところ、食いつぶしている。敏夫は結果的に母親の資産を借金返済や結婚式の費用で使ってしまっていますね。お金で問題を解決しようとしている。空港で、「足りなければまた払うから」と去っていくサラリーマンがいました。日本人同士で喧嘩のシーンもありましたね。玉置浩二がぶん殴られて、ルビーは男とタクシーに乗っていく。結婚は親に言うこともなく決めるし、離婚も事後報告。騙されて店を失うなんていう人もいます。

 それでも、敏夫が憎めないのは彼自身が騙され、嫌な目にあっても、ルビーのことだけを追い求めたからなのでしょう。

 二人の考えかたの違いも面白い。

 ルビーは最初、敏夫に「LOVEとちがうよ」といいます。ビジネスでそういうことをしている彼女ですが、嘘をついているわけではない。結婚しているわけでもないし、自分は自分で、自分のことを決める権利は自分にある。だから、一方的に俺の女になれというような考えは受け入れられない。

 敏夫は金を払っているのだから、と迫りました。でも、ビジネスのつもりではないのでしょうね。結婚していたわけではないけど、そういう関係になったし、恋人だと思っているから、他の男とビジネスでも付き合ったりしているのは許せない。でも、ルビーに底から惚れているので、わざわざ追っかけて行って最終的にはすべてを受け入れる。

 そして、なんといっても、中村玉緒の演じる母親がいいですね。敏夫のことをずっと心配していて、それでも幸せを祈っている。この点では家族を思うルビーと共通で、女性を端的に描いているのでしょう。

 対して、男性はかなり自分勝手な人ばかりでしたね。大谷直子が演じる女性も「昔の男がきたから日本に行く。失敗したらまた返ってくるかも」なんてことを言っています。もっと早く来てやんなよ……。

 

 ラストシーン。たくさんの子供たちとルビーと一緒にいる敏夫。これは『夢の帰る場所』とは対照的です。

 『夢の帰る場所』はネタバレになってしまうのでここでは特に言及しませんが、興味を持たれた方は視聴することをおススメしておきます。素晴らしい作品です。本田美奈子さんのご冥福をお祈りいたします。

 

 『フィリッピーナを愛した男たち』は原作があるようです。 久田 恵によるルポとして文春文庫から出版しています。こちらも後で読んでみたいと思います。

 

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 最後までご覧くださってありがとうございました。

 更新は不定期になりそうですが、良かったらお付き合いください。