WANDS 「PIECE OF MY SOUL」

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発売年月日:1995年4月24日

週間最高順位:1位

売上:96.4万枚

1995年度のアルバム売上枚数:年間16位

 

議論を巻き起こした、WANDSの4枚目のアルバムです。

 

収録曲 (青字はシングル曲)

 

  1. FLOWER
  2. Love&Hate
  3. 世界が終るまでは…
  4. DON'T TRY SO HARD
  5. Crazy Cat
  6. Secret Night~It's My Treat~
  7. Foolish OK
  8. PIECE OF MY SOUL
  9. Jumpin' Jack Boy~Album Version~
  10. MILLION MILES AWAY

 

作品紹介

収録シングルは 3.世界が終るまでは…、6.Secret Night~It's My Treat~、9,Jumpin' Jack Boy~Album Version~ の三曲。英語のタイトルが目立ち、アルバムの雰囲気がそれまでのものと大きく変わっている。それまでのWANDSのファンからは賛否両論らしい。

発売されると、2週連続1位、90万枚以上の売り上げ、年間16位などを記録しました。これまで通り、売上的にもWANDは安定したセールスを記録しました。

しかし、シングル曲の売上は急落していきます。「世界に終わるまでは…」はミリオンセラーを記録しましたが、「Secret Night~It's My Treat~」で売上が半減。その後売上はさらに落ち込んでいき、上杉と柴崎の脱退もあり、WANDSは表舞台から姿を消していきます。いわゆる第二期WANDSの最後の一枚、という位置付けのアルバムになります。

 

曲の感想

 1.FLOWER  作詞:上杉昇 作曲:柴崎浩 編曲:葉山たけし

度肝を抜かれた一曲。グランジオルタナティブ・ロックが融合した、ヘイトを昇華させている名曲です。自嘲した歌詞と、ダークな雰囲気がこのアルバムがこれまでと異なることをよく表しています。

 2.Love & Hate  作詞:上杉昇 作曲:柴崎浩 編曲:葉山たけし

一転変わって、ポップな曲調。昔からのファンはイントロを聞いて安堵したのではないでしょうか。しかし上杉の声が聞こえてくると、また困惑したのでは。歌詞は全編にわたって孤独を描いています。しかし、未来に向けた意志が垣間見えるんですよね。個人的にはこのアルバムを一番表しているのはこの曲だと思います。

 3.世界が終るまでは…  作詞:上杉昇 作曲:織田哲郎 編曲:葉山たけし

スラムダンクのEDテーマとして有名ですね。唯一の日本語タイトル。名曲です。この曲もまた歌詞が強烈。それまでのWANDSから大きく転換し、ロックなサウンドを前面に出したバラードとなっていて、この曲あたりからやりたいことができるようになってきたのかな、と感じる一曲。

 4.DON'T TRY SO HARD  作詞:上杉昇 作曲:柴崎浩 編曲:葉山たけし

アコギ主体の一曲。シンプルな曲ですが奥が深い。歌詞は幼き頃の自分と現在の自分を対比している。夢に向かっていく上杉の姿がだんだんと見えてきます。勘のいい人はこのあたりでWANDSをやめていくのだと思ったのではないでしょうか。

 5.Crazy Cat  作詞:上杉昇 作曲:柴崎浩 編曲:葉山たけし

挑戦状という印象。そして、それが「僕ら」であり、一人ではないということが描かれています。これもまたロックですな。

 6.Secret Night~It's My Treat~  原曲:栗林誠一郎「IT'S MY TREAT」

 作詞:上杉昇 作曲:栗林誠一郎 編曲:池田大介

やっちまったよこいつら…。それまでの売れ線テクノポップから本格的にグランジオルタナティブへ行っちゃった。そこが堪らなく素晴らしい!彼らのやりたい音楽がこの曲から少しずつ見えてきたはず。低い音からサビにかけて高音になっていき、サビで最高潮へ達する構成は見事。歌詞は焦燥感というかじれったさが見えてきます。「もう待てない」が本当のことになってしまいました。

 7.Foolish OK  作詞:上杉昇 作曲:柴崎浩 編曲:葉山たけし

最初は5.Crazy Catのような挑戦状かと思っていたら、「生きること」を描いているのだと気が付きます。おそらく、自殺した若い人が社会問題になっていたのもあって、様々なメッセージをちりばめたのではないでしょうか。上杉自身も葛藤を繰り返す一人の若者でした。

 8.PIECE OF MY SOUL  作詞:上杉昇 作曲:柴崎浩上杉昇 編曲:葉山たけし

表題曲。ロックという夢への想いが見えてくる曲です。そして覚悟を決めている様子がうかがえます。少ない音から入ってサビでドーンと来るのが最高!

 9.Jumpin' Jack Boy  作詞:上杉昇 作曲:栗林誠一郎 編曲:葉山たけし

シングル盤と大きく変わってロック調です。それでも疾走感は変わらず。タイトルは実はすごい。自らをジャンピングジャック=糸繰り人形に例えて、中身はラブソングっぽい。考えてやったのだとしたら相当皮肉です。

 10.MILLION MILES AWAY  作詞:上杉昇 作曲:木村真也 編曲:葉山たけし

キムシン作曲。珍しいですね。強い決意が見えてくる歌詞。壮大なサウンド。どれが欠けても名曲とはなりえないんですよね。アルバムの最後を飾るのにふさわしい所信表明といったところか。特に私が好きなのは歌詞とアウトロです。もう完璧と言って差支えがない。

 

全体感想

大きく変貌を遂げたWANDSでしたが、それまでの良さはしっかりと生かしている一枚となりました。曲名をサビに持ってきたり、ポップなシンセサイザーもあったり、完全に過去を否定したわけではないんですね。自分たちのやりたいことと求められていることとが、うまく混じりあう不思議なアルバムです。

 何より驚くべきなのは、まだこの時上杉は22歳!20代前半にしてミリオンヒットを連発して、世の中の酸いも甘いも噛み分けてしまった。それでもつぶれずに自らの夢をかなえるためにWANDSを脱退するといのはまさにロックですね。

95年はそれまでのビーイングの勢いが落ち始めて、小室やミスチルスピッツなどに中心が移っていきます。実は上杉は彼らたちより若かったんですよね。本当にすごいと思います。

95年というと阪神淡路大震災地下鉄サリン事件と立て続けに大きな出来事が発生し、戦後日本の転換点といわれることもあります。この年ブレイクしたスピッツ草野マサムネなんかも、そうした出来事が歌詞や曲に影響したということを言っていたと思います。おそらく上杉も思うところがあったのではないでしょうか。

アルバムから離れてしまいました。全体的にはやはりダークな印象。それでも一曲一曲がよくまとまっていて、全体でみてもきれいにまとまっています。それでも、何かに負けそうな気持になったり、挑戦したいときに真っ先に聞く一枚です。ただ暗いだけではなくて、そこに強い「意志」があるんですよね。今の自分より若い年齢でこれだけのアルバムを世に出した上杉昇という男に強い共感を覚えることで、自分はまだまだやれる!という気持ちになれます。

95年は名盤が多かった年ですが、このアルバムはその中でもトップクラスのアルバムと言っていいでしょう。個人的にはスピッツの「ハチミツ」と同率1位です。これだけのアルバムが中古屋で100円程度で売られているとは信じられません。ぜひ、聴いてみることをおススメします。

 

評価

歌詞:10/10

曲:10/10

演奏:10/10

歌唱:10/10

お気に入り度:10/10

総合:50/50

 

最後までご覧くださりありがとうございました。